プラズマって、一体何のこと?
プラズマは、固体、液体、気体に続く第四の物質。いまプラズマという言葉が各方面で使われているが、プラズマとはいったい何なのだろうか? じつはプラズマは、私たちの日常生活において非常に身近な存在なのだ。蛍光灯の灯りはプラズマだし、街のネオンもプラズマ発光を利用したものだ。 それにカミナリもプラズマだし、ローソクの炎もプラズマだ。 それにプラズマテレビもある。そのあたりを冷蔵庫の氷で説明してみよう。冷凍庫から出した氷は固体だ。 これに熱を加えて温めて行くと溶けて水になる。 液体だ。 さらに温めると蒸発して水蒸気になる。 気体だ。 ここまでは誰でも知っているだろう。 では、この気体にさらに熱を加えるとどうなるだろうか。 気体の分子が分解して原子になり、さらに熱を加えると原子を構成しているプラスの陽子とマイナスの電子がバラバラになる。 この状態が一般的にプラズマと呼ばれている。 同じ空間の中をプラスの電荷を持つ陽子とマイナスの電荷を持つ電子が別々に自由に飛び交い、 全体としては±0の状態を維持してバランスのとれている状態を言う。 つまりプラズマとは、自由に動き回る荷電粒子の集まりなのだ。 固体、液体、気体に続く第4の物質とも呼ばれている。このプラズマという言葉はギリシャ語に由来し、「成形されたもの」という意味を持っている。 プラスチックと同じ語源だ。ゆえに、 入れ物の形に従って自由に形を変えることができるという特性を持っている。1932年にノーベル化学賞を受賞したアメリカのラングミュア博士により命名された。プラズマは、原子がプラス荷電の陽子とマイナス荷電の電子に分離した状態だが、じつはマイナス電子は元のプラス陽子の周回軌道に戻ろうとする性格を持ち、陽子もまた、不安定な自分を元に戻そうと周辺を動き回るマイナス電子を捕まえ、元の安定した形に戻ろうとする。 ここにエネルギーが発生するのだ。このエネルギー原理がいまさまざまな分野で利用され、医療界においてもいま注目され始めてている。
プラズマは、いま魔法の物質とも呼ばれ、無限の可能性を秘めている。
プラズマは、私たちの身の回りの自然現象や宇宙空間の中に満ちあふれている。 さらに、日常生活の些細で目立たないな所でも大切な役目を果たしている。自宅や会社の蛍光灯、夜の街のネオンサイン、電車のパンタグラフの火花、自動車のプラグの点火などもプラズマ放電によるものだ。現在でも利用範囲は幅広く、 実にさざまざな分野で必要不可欠な存在となっている。プラズマはその性質から大別して、光利用、熱利用、 電気利用、 力学利用、化学反応利用、核反応利用の六つに分けられる。 プラズマは、光、熱、 電気、力学、化学、 核融合などの特性を利用して、環境やエネルギーなどの分野へ限りない可能性を秘めている。その汎用性の広さから、魔法の物質とさえ評されているのだ。

太陽こそ、巨大なプラズマそのもの!
太陽はあらゆる生物の生みの親、生命の根源。
昇りたての朝日を胸一杯に吸い込み、今日一日のエネルギーをたっぷり満たした気分になる。そんな経験をされた方は多いと思う。まさに朝の太陽はエネルギーの塊で、暖かさや眩しさ、気持のよさを全身に取り込んでくれる。私たち人間を始め地球上に生を受けるあらゆる生物は、太陽からの熱、光のエネルギーを受けることにより生を維持してきた。地球創世記の頃、この太陽エネルギーが海に降り注ぎ、地上の生物の源が誕生した。太陽は私たち生物の生みの親なのだ。地球の母と言ってもいい。今から約250万年前に二足歩行の猿人が出現し、数万年前には今の人類の祖先とされる新人類が現われた。この頃の原始人は、何より自然との戦いが生きる術だったのではないだろうか。夜の暗さに怯え、寒さに耐える毎日はさまざまな恐怖との戦いであったと思われる。暖かく明るい朝日が昇る朝を、どれほど待ち望んだことかだろうか。太陽は昔から人間の生活や崇拝の中心に据えられていた。その太陽が、なぜ強大な光や熱を発するのか、その問いに科学で答えられるようになったのはここ100年位のことだ。そして太陽こそ、プラズマそのものであることが解明された。
太陽は巨大な核融合プラズマでできている。
太陽の半径は約70万kmで地球の約109倍の大きさだ。中心に核があり、 その周りに放射層、対流層、 光球があり、 さらに彩層、 コロナが取り巻いている。私たちが日常見ているのは光球の面で約500kmの厚さがあり、温度は約6,000万℃だ。 その上の彩層は約2,000kmの層で温度は数100万℃。さらにその外側に数100kmの厚さで、約100万℃のコロナが広がっている。太陽の中心の核は約1,500万℃あり、四個の水素原子からヘリウムが生成される核融合反応により、激しく燃え続けている。 約800万℃以上では、陽子同士で重水素原子が作られ、 その重水素と陽子でヘリウム3ができ、ヘリウム3同士でヘリウム4と2個の陽子が造られる「陽子一陽子チェイン」 反応が起こる。つまり、電子と陽子の衝突によりガンマ線が発生し、やがて太陽表面に達して可視光線となる。約1,300万℃以上の世界ではヘリウムの燃焼でできた炭素、窒素、酸素を触媒とした水素燃焼反応も起きている。 話が少々難しくなったが、太陽は重力に閉じ込められた巨大な水素の核融合プラズマであるという事実だ。他にも夜空に輝く恒星エネルギーも水素の核融合反応で維持されている。神秘に輝く大宇宙は、その約99%はプラズマでできているという。私たちの住む地球はプラズマの海に漂う一隻の小舟といったところだろう。そして、その光と熱の強大なエネルギーが何年にも渡って、私たち人間生活に利便性と健康をもたらしてきたこの太陽と同じ原理のプラズマ活動は、 将来に向けていろいろと夢のような可能性を数多く秘めている。 産業界においても、 医学界においても、今まさに「プラズマ時代」が幕を開けたと言ってもいいだろう。
北欧の夜空を美しく乱舞するオーロラも、その正体はプラズマ。
オーロラは、宇宙電子と地球の酸素電子の衝突による発光。
北欧の冬空を魅了する幻想的なオーロラ、その妖し気な美しさを知らない人はいないだろう。 いつ出現するかわからないオーロラの美しい光の舞い、じつはプラズマ発光によるものなのだ。オーロラとは空気が光る現象だ。ではなぜ、 空気が光るのだろうか。 それは太陽風と呼ばれ、宇宙から飛んできた電子が地球上の空気にぶつかるためだ。 空気中の窒素や酸素の原子は、 原子核とその周囲を回る電子から構成されている。 空気中を浮遊する酸素電子は、宇宙からやってきた高エネルギーの電子と衝突し、これまでより一段高いエネルギーを与えられる。そのため酸素電子はこれまでの軌道より膨れて外側を回るようになる。 この状態は酸素原子にとって不安定な状態なので、元の安定を求めて時間の経過とともに最初の軌道に戻ろうとする。こその時の二つのエネルギーの差が光となって放たれるのだ。簡単に言うと、太陽から発した太陽風が、地球の大気と衝突した際に光を発する現象だ。一般的に物と物とが激しくぶつかった時に、カチッと火花が散る。それと似たような現象と考えてもらえればいい。 空気中の安定した状態(プラズマ状態)が、 宇宙からの粒子によって乱され、一時的に錯乱状態に陥る。その錯乱状態がオーロラの正体なのだ。 つまりプラズマが、あのような美しく幻想的な光の舞を作り上げると言えよう。ではなぜオーロラは北極や南極近辺でしか見られないのだろうか。 それは、地球の回りは宇宙線から地球を守るため幾重もの磁力線が取り巻いており磁場が形成されているからだ。 太陽風の粒子はこの磁場を突破することができない。 唯一北極と南極周辺は磁場が弱いため、太陽からの粒子が入り込め、地球上の酸素原子と衝突できることになる。そのためオーロラが発生するのは北極周辺か南極周辺に限られるのだ。

オーロラは、 地球上の自然現象でもとも芸術的。
オーロラは地球上で織り成す自然現象の中でもっとも芸術的であり、宇宙の神秘を感じさせてくれる。 その存在は古くから知られ、 古代バビロニアの石版に楔形(くさびがた)文字でオーロラだと推測できる記述が刻まれている。 また紀元前四世紀には、ギリシャの哲学者アリストテレスが「気象学」という著書の中で『天の裂け目から噴出するガス』と表現し、日本でも「日本書紀」に「赤気」としてオーロラのことが記されている。低緯度から見えるオーロラは赤いのだ。正体不明の赤や緑のオーロラは、古くから争いの前兆や神の怒りとして多くの伝説が残っている。

雷鳴とどろく稲光りや落雷も、 その正体はプラズマ。
カミナリは、空気中の水蒸気の電位バランスの乱れが原因。
カミナリは、まず空気中の水蒸気が集まり雲になり、その雲が上昇するにつれ氷の粒になる。 その粒がぶつかり合ったり、こすれ合ったりすると静電気が発生し雲の中に溜まっていく。 この雲が雷雲だ。雷雲の中ではマイナスに荷電した氷の粒が下の方に集まり、プラスに荷電した粒は上に集まり、 その間の電位の差はどんどん大きくなる。 磁石と同じだ。雲の中は普通絶縁状態だが、 電位の差があまりにも大きくなり絶縁状態が壊れると、上のプラス電子と下のマイナス電子の間で放電が始まる。これが稲光りの正体だ。そして、雲の中のマイナス電子が地表のプラス電子と中和しようと、ここでも放電が起きる。 これが落雷現象だ。 稲光りにしても落雷にしても、空気中の水蒸気の電位バランスが崩れることに起因しているともいえるだろう。 空気中の電位のバランスがとれていれば(プラズマ状態)、カミナリも稲光りも発生しないのだ。
昔から、 「春の雷鳴は秋の豊作を呼び、海の雷鳴は豊漁になる」と言われている。
昔から、 春に雷が多い年は豊作になると言われてきた。「稲妻ひと光で稲が一寸伸びる」などの表現は、いまだ語り継がれている場所もある。 これは、 稲妻の光の正体はマイナス電子で、これにより空気中の窒素が酸化され一酸化窒素となる。 そして、この一酸化窒素が雷にともなう雨や落雷という現象とともに田畑に拡散され、肥料となって稲の生育を促進するのだ。 このことは現代科学により証明されている。同じように人間の健康にとっても一酸化窒素はとても需要な役目を果たしている。 心臓と血管の健康には欠かすことのできない物質なのだ。一酸化窒素の主な働きは、血管の筋肉を柔らかくして広げ、血流をスムーズにしてくれる。 そして、血管内のコレステロールや血栓の発生を防ぐのだ。 この働きにより、高血圧や高血糖、 心臓病などの発症リスクを少なくしてくれる。さらに、一酸化窒素により血流と血圧が整えられると、 身体がリラックスすることにより、肩こりや慢性疲労、冷え性などの改善にもつながってくる。 血管の柔軟性を保つことは、健康と若々しさを保つ秘訣なのだ。
宇宙空間の99.9%は、プラズマで満たされている!
星や銀河の美しい輝きも、その実態はプラズマの中での核融合反応。
私たちの日常の暮らしが、どれだけプラズマと密接な関係を持っているか分かってもらえたであろうか。 太陽が人間生活にどれだけの恩恵を与えてくれるか、カミナリもまた豊作、 豊漁の導き手であったことがお分かり頂けたと思う。このようにプラズマは、私たち人間が毎日健康で快適な暮らしを送るためのかけがえのない存在だったのだ。 だからこそ、今ブラズマに各方面から熱い注目が集まっていると言えよう。話を私たちの暮らしからもう少し広げて見ると、プラズマへの見方が大きく変わる。 先に太陽そのものが核融合反応による巨大なプラズマであることは説明した。他にも、 夜空に美しく輝く恒星たちや、銀河なども、自らのエネルギーで輝くプラズマなのだ。夜空いっぱいにさまざまな星が美しく輝いているのも、重力により閉じ込められたプラズマの中での核融合反応によるものなのだ。じつは宇宙空間は何もない空間ではなく、薄いプラズマで満たされていることが現代科学では常識となっている。宇宙空間のなんと99.9%はプラズマで満たされているのだ。

古代の物質観にも対応するプラズマの捉え方
古代ギリシャ当時から、物とは何からできているのかという物質観はいろいろあった。 紀元前600年頃、 記録に残る西洋哲学の最古の自然哲学者タレスは、万物の根源は水であると唱えた。 また同じ自然哲学のアナクシマンドロスは空気を、 そして彼らより少し後のヘラクレイトスは、火を物質の根源と考えた。そしてその後も諸説が飛び交ったが、エンペドクレスの 「土、水、 空気、 火」 の四元素説が定説となった。世の中の物質の根源は 「土、水、空気、火」の四つにあり、「愛(引力)」と「憎しみ (圧力)」により万物が生成変化すると説いた。この四元素説はアリストテレスにも支持され、その後長くヨーロパの自然哲学界に影響を及ぼした。この古代ギリシャの物質は、そのまま現代にもそっくり当てはめることができる。 固体(土)から液体(水)、そして気体(空気)、そして火をプラズマと考えれば、紀元前600年の物質観がそのまま現代に通用することになる。このことは古代インドでもいくつかの宗教学派が物質とは何かを考えた。そして、究極粒子としての原子の結合と分裂により物質が生じると結論づけたのだ。こ場合の原子とは、「地、水、火、風」の四元素を言う。同様に中国でも陰陽五行説に見られるように物質は「木、火、土、金、水」で構成され、 世界の起源は陰と陽で説明できると説いた。古代ギリシャと同じように、複数元素の物質観と二元論的な宇宙観が見られるのは、地域、年代を問わず、人間に共通した何かがあるのかも知れない。火をプラズマとして捉えれば、古代ギリシャも古代インドも、物質観は今も変わらないということになる。
▼連絡・コミュニケーション▼
▼サイトマップ▼