
歩くことは単純な行動のように思えるかもしれないが、実はそうではない。米カリフォルニア・パシフィック医療センター研究所の科学部長である疫学者のペギー・コーソン氏はそう説明しております。歩行は驚くほど複雑な行動で、「理由はまだわかりませんが、歩く速さは死亡リスクと関連しているのです」とペギー氏は言っております。また、米国立老化研究所(NIA)によれば、移動能力の低下は高齢者が自立した生活を送れなくなる主な理由の1つと上げております。また、認知機能の低下とも密接な関係があるという研究もあります。つまり、歩行速度を維持できる人は長生きする可能性が高いということです。
この10年ほどで、歩く速さは体温、血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度などと並ぶ「第6のバイタルサイン(生命兆候)」として注目されるようになりました。歩行速度から、その人がどのような健康問題を抱えることになるかを、幅広く予測できることが明らかになったのです。
「歩行には身体のあらゆるシステムが関わっています」と、米ピッツバーグ大学の理学療法学教授であるジェシー・バンスウェアリンゲン氏は言っております。通常の診察で何の異変も見つからなくても、歩き方に変化が見られるなら、そう遠くないうちに何らかの診断が下されることになるかもしれません。
米国立老化研究所(NIA)によると、私たちが活動的でいるためには、それぞれ持久力、筋力、バランス、柔軟性に効く4種類の運動が必要だといっております。それは始まりにすぎなく、「運動は大切ですが、すべての問題を解決する万能薬ではありません」とペギー・コーソン氏は言っております。
最もやってはいけないことは動くのをやめることだ、という点で専門家の意見は一致しています。何時間も座りっぱなしでいれば体じゅうが痛くなるし、手をよく使う日は関節炎があまり気になりません。やりすぎではなく、私たちの体はある程度、動くことを求めているのです。
一般の高齢者の30%が転倒の経験があるのに対し、認知症の人では半数が転倒を経験しております。
多くの高齢者は、推奨されている運動の内容を知っていますが、実践する人は少ないです。
でも、音楽をかけると動きやすくなったり、電気刺激を受けた方は、受けなかった人たちに比べて平均歩数が増え、数カ月後も維持しているという研究もあるそうなので、ぜひ、音楽を聴きながら散歩するとか、プラズマに入って刺激を受けて活動的になるとかいいのではないでしょうか。