腸内細菌と筋力トレーニングの効果


Microbiome intestine factories and microbiota. Gut health 3d render. Microvilli with factories in intestine . High quality 3d illustration

「腸筋相関」で、腸内細菌の影響で筋トレ効果が変わります。日本人の特有の腸内環境と長寿の秘訣は、海藻、豆、野菜で腸内酪酸増やし筋肉量アップです。筋肉から分泌されるSPARCホルモンが大腸がん予防します。若いうちから「貯筋」しましょう!

筋肉が少ないと、長期に入院するリスクが高まり、感染症にかかりやすくなり、死亡率が高まります。それに対し、筋肉が多いと、認知症にかかりづらくなり、がんにかかった時にも筋肉量が多い人ほどがん手術の予後が良く、抗がん剤や放射線療法が効きやすいことがわかっている。筋肉からは「イリシン」や「スパーク」といった「天然の抗がん剤」が分泌されています。

筋トレをしている人なら「同じようなトレーニングをしていても、筋肉がつきやすい人とつきにくい人がいる」と感じることがあるのではないでしょうか?

 たしかに筋肉のつきやすさには、人によって違いがあります。そして、その違いを生む要因のひとつに考えられているのが「腸内細菌の違い」です。

 意外かもしれないが「腸」と「筋肉」には非常に深い関係性があり、腸内細菌のバランスによって筋肉のつき方に違いが生まれる可能性が指摘されています。これを「腸筋相関(ちょうきんそうかん)」といいます。つまり、「腸内細菌が乱れていると十分に筋トレの効果が得られず、筋肉がつきにくくなる」といえるのです。

パプアニューギニア高地人と日本人の腸内細菌を比較調査したところ、彼らの腸には日本人にはほとんど見られない特殊な腸内細菌が多く存在していることがわかりました。そのひとつが「窒素固定菌(ちっそこていきん)」という細菌でした。

 パプアニューギニア高地人がサツマイモを食べると、腸内で分解されて窒素が発生する。すると、窒素固定菌によってその窒素から筋肉の材料であるアミノ酸が生成される。そのアミノ酸から筋肉ができる――。そう考えられています。

 彼らの筋肉は肉のたんぱく質ではなく、「腸内細菌が窒素からつくった独自のプロテイン」でできています。

日本人がパプアニューギニア高地人の真似をして、同じようにサツマイモばかり食べても筋肉をつけることはできないでしょう。たんぱく質不足になってガリガリにやせてしまうでしょうね。日本人の腸内細菌は、彼らのそれと違って窒素固定菌がほぼ存在していないからです。

 ですが、日本の長寿地域での研究では、肉を食べなくても、たんぱく質の摂取量が多くなくても、筋力が衰えず、年齢を重ねても元気で活動的に暮らしている人が大勢いることが判明しました。そこには、やはり、日本人独特の腸内細菌が関係しているそうです。

 日本人の腸内細菌は世界的に見ても非常に特殊で、例えば日本人の約90パーセントに、海苔などの「海藻」を分解する酵素を持った腸内細菌の存在が認められています。こうした腸内細菌を持っているのは、隣国である中国を含む世界各国では約15パーセント程度しかありません。日本人と中国人の遺伝子は非常に似ているのに腸内細菌はまったく違うそうです。

 この特有の腸内細菌のおかげで、日本人は海藻に含まれる「ポルフィラン」という炭水化物を分解して栄養源(エネルギー)に変えることができます。

日本の長寿地域での研究では、筋肉量と肉などのたんぱく質摂取量とは相関関係がありませんでした。筋肉量と相関したのは、腸内で「酪酸」を作る「酪酸菌」(ラクノスピラ、ロゼブリア、コプロコッカス)でした。そして、腸内に酪酸菌が多い人が食べているものを分析すると、「海藻」や「豆」、「野菜」、「味噌汁」などでした。肉を食べているから筋肉が多いわけではありません。肉などのたんぱく質を摂ることだけが筋力アップや筋量の増加につながるとは限りません。肉食も手段のひとつではあるが、絶対条件ではないのです。

 パプアニューギニア高地人がサツマイモで、日本人が海藻類などで筋肉を増やせるように、腸内細菌の違いによって効率的に筋肉を得るためのアプローチも異なることを理解しておく必要があります。

 日本人の死因の第1位は「悪性新生物(がん)」、第2位は「心疾患」、そして第3位が「老衰」です。日本人の多くは特定の病気ではなく、体の衰えによって亡くなっています。サルコペニアが進行してフレイルになり、そのまま亡くなる――これが日本の高齢者に多い“亡くなり方”なのです。

 太りすぎが健康によくないのはいうまでもないが、筋力や筋肉量が著しく低下するようなダイエットや生活習慣もまた健康を害する要因になってしまいます。

 また、若いうちから筋肉を落としてしまうと、将来、年を重ねてからサルコペニアやフレイルに陥って寝たきりになるリスクが高くなります。サルコペニア肥満」という言葉があります。加齢による筋肉量の減少であるサルコペニアと、体脂肪率が多い体型を掛け合わせた言葉です。サルコペニア肥満は、通常の肥満よりも生活習慣病にかかりやすく、運動能力を低下させるため、結果として寝たきり生活になってしまう危険性があります。

 若い頃に落ちてしまった筋力を高齢者になってから回復させるのは容易ではありません。だからこそ、若いうちから意識して筋肉を減らさない生活を心がけるべきで、「貯金」ならぬ「貯筋」をコツコツ続けるといいですね。

健康で長生きするためには筋肉を減らさないことが重要であり、筋肉を増やして萎縮・減少を防ぐためには、腸内に酪酸を増やすことが大事になります。日本人は酪酸が多い人ほど筋肉も多いです。腸内の酪酸菌の量と筋肉量が比例しているからです。

 そして日本人にとって身近で簡単に手に入る酪酸を増やす食材(つまり酪酸をつくる酪酸菌を活性化する食材)が、「海藻」です。

あと、大事なのは、筋肉はただ体を支え、体を動かすためだけのものではないということです。筋肉もほかの臓器と同じように、生命活動に必要なホルモンを分泌する重要な「内分泌器官」なのです。

 しかも筋肉は、がんの発生やがん細胞の増殖を防ぐ“天然の抗がん剤”とも呼べるホルモンをたくさん分泌しているそうです。

イギリスの超一流の医学雑誌『GUT』で発表された論文では、筋肉から分泌される「SPARC(スパーク)」というホルモンが血流にのって大腸まで届き、そこで大腸がんの発生を抑制する働きをしていることが報告されています。

 つまり、「筋肉量が多い人ほど大腸がんになりにくい」可能性があるということだ。運動して筋肉量を維持することで、大腸がんのリスクを減らすことができるのです。

世界でもっとも権威のある内科系医学雑誌『The Lancet』にも、大腸がんや乳がんの10%は「不活動(運動不足)」が原因であるという報告が掲載されています。適度な運動に加え、酪酸菌を増やすことがわかりました。

酪酸菌を増やし、筋肉を増やしていきましょう♪


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